「我が子を食らうサトゥルヌス」フランシスコ・ゴヤ

 ローマ神話に登場するサトゥルヌス(ギリシャ神話ではウラノス)は将来、自分の子に殺されるという予言に恐れを抱き5人の子を次々に呑み込んでしまう。

 この絵を家に飾りたいと思う人が居るのだろうか?と甚だ疑問に感じる。それほどに近寄りがたい迫力が有る。

 この神話は権力者の異常な猜疑心を揶揄しているのかもしれないが、私は本稿を書いていて、思わずこの絵を思い出した。

 些細なほころびが「道」の乱れを生み、ひいては国家を腐敗させる。国家は時に、例え受け子であろうと、その罪が「道」に照らせ合せて大きく問題であると判断される時は、首をかじって飲み込むような苛烈な対処により、「火」にならなければならない。

 とくに、教育水準が低い若年層に対しては、刑罰の質を考えることも重要だが、まず、理屈抜きに、国家がサトゥルヌスになって、近寄らせないことが重要である。