「火を失して水を海より取らば、海水多しと雖も、火は必ず滅(き)えざらむ。」
(火事になったのに海の水を引こうとするのでは、海に水がいっぱいあるからといって、その火事は消せない。)【遠水は近火を救はざればなり】。韓非子 説林上篇
1 アメリカの水はどこまで届く?
⑴ グアム
先日、グアムに行ったと話したが、この時、周囲の人たちに、「Esta(エスタ)」の申請はしましたか?忘れられがちだから気をつけてくださいよ。」と言われた。実は聞いた時、なんのことだか全くわからなかった。
Visaが不要なことは確認していたが、「Esta(エスタ)」って何?
調べたところ、ネットで簡単にできるが、必ず必要になるVisa申請に近い、重要な手続きだった。旅レンジャーの娘に確認したところ、「ハワイに行くときは必要だが、グアムの場合は、特例で不要になっている。」とのこと。理由を調べてみて驚いた。
グアムというのは、アメリカの領土と言われているが、49州には含まれていない、特別自治区らしい。確かに、向こうの役所には、星条旗も掲げられているが、並列して、自治領の旗も掲げられていた。
とは言え、自治意識はそれほど強くなかろう。先住民のチャモロ民族は人口12万のうちの40%、公用語はチャモロ語と英語と言われているが、英語が主流。
安全保障はどうなっているのだろう?
グアム島は、東アジアを牽制するのに戦略的に重要な位置にあるため、島の3分の1を米軍基地が占め、防備は厳重である。
だが、ハワイとグアムが同時に攻撃を受けたら、どちらを重要視するだろう。当然ハワイであろう。要はアメリカにとって、グアムは、自陣を直接攻撃されないための緩衝地帯の拠点にすぎず、太平洋戦争時日本軍が必死で守ったほど重要ではないのである。
但し、ハワイとグアムを同時に攻めるなどという「王手飛車取り」的戦略は非現実的である。可能性があるとしたら、日本くらいであるが、真珠湾攻撃が成功した裏には、そこへ持ち込んだ蒋介石の外交努力、これを予測しても敢えて歓迎した、米国のかなり深い闇の助けが有ってのことである。
⑵ 台湾
台湾有事・台湾有事と人は言うが、日本が参戦してくる可能性がある限り、中国は台湾を攻めない。中国が在日米軍を恐れて台湾を強硬統治しない訳ではない。もし、グアムと台湾とを同時に侵略しようとすれば、米軍は、グアム防衛を重視する。この、「王手飛車取り」はそれほど非現実的ではない。
台湾は、沖縄の米軍基地と比べても、はるかに中国の海岸線に近接している。それもかなり長い海岸線に沿って。
現代戦では、航空機だけでなく、ミサイルやドローンなども進化しているというが、飛び道具というのは、所詮、戦況を変えることは出来ても、その戦況を維持することには長けていない、いわゆる戦略兵器である。
制圧した地域を維持するのは最終的に陸戦部隊であり、これを運搬する”海上輸送”の時間と量が勝敗を左右する。沖縄には、海兵隊という世界最強の陸戦隊が存在するが、彼らが台湾に到着する頃までに、その6倍以上の兵員を陸上げできるだけ、台湾沿岸に船を横付けされたら、手出し不能となる。
しかも、今回の仮定では、米軍は、同時にグアムを攻められ、そちらの防衛を優先している。残念ながら、台湾陥落までの時間はかなり限られる。
そこで、台湾は、日本の自衛隊に救援を要請する。台湾にだって軍隊がある。これと連携して、世界軍事力第8位(仏に抜かれちゃった)の自衛隊が、側面・背後を脅かせば、中国は半日で撤退を余儀なくされるだろう。
しかし、さて、このとき自衛隊は救援に向かうだろうか?
台湾は、国連加盟国にも認められていない。互いに安全保障条約も同盟も結んでいない。同胞民族が住んでいるわけでもない。親日で知られる台湾を見殺しにするのは忍びないが、日本には、この紛争に関与する大義名分が無い。
⑶ ウクライナ
前述のような例が実際に起きているのが、ウクライナだ。
ウクライナは、NATOに加盟し、西側の仲間入りをしようとしていた、半分仲間なのである。しかし、ロシアの全く大義なき侵攻に対して、米国を始め、ヨーロッパ各国は、軍事支援はしても、実際に救援部隊は派遣してくれない。
私は、トランプ大統領がどのような策でこの事態を収拾するかに興味があり、本稿の執筆を控えていたが、さすがのトランプ氏でも、現状を完全に覆すことはできないようだ。すなわち、すでに実効支配された領土はロシアのもの、しかも、NATOへの加盟も先送りにするという。
これが、「遠水近火」。普段どんなに頼もしいことを言っていてくれていても、どんなに科学が進歩しても、地理的優位は、兵法の常なのである。
2 日中韓朝4カ国の仲が悪いのは誰のせい
⑴ 中国
2005年から始まった、「日中共同世論調査」の中で、お互いが、お互いの国をどう思っているかという質問について、「中国のことをよく思っていない」という日本人は、調査開始以来ずっと90%近くを維持しており、2023年の結果も、92.2%と過去最低の2014年(93%)についで、2番目に高い比率となった。
これに対し、中国は、2013年(92.8%)をピークに減少。2023年は、約63%まで下がっている。
「反日教育で日本を敵視している。」「パクリばっかりしている。」「軍備をどんどん拡張していつか日本に仕返ししようとしている。」という、日本国内の反中キャンペーンに乗って、別に中国人の友人がいるわけでもなく、何かよく知っている筋の職業でもないのに、勝手に憎悪を燃やしているのは、恥ずかしいかな、我々の方である。
断っておくが私は、民主主義を最上の政治形態と考えている。しかし、民主主義は、国民一人一人に一定の教養と品格を求める。前述のような、浅はかな固定観念をいつまでも手放すことができず、柔軟にかつ冷静に直近の世界情勢を分析できないようでは、官僚に支配されていた頃の日本の方がマシと言われても仕方がない。
2024年度国別幸福度ランキングで、日本は51位で、中国は60位と僅差だった。民主化されていなくて、言論が統制されていても、民の期待に応える政府であれば、評価される部分もあるわけだ。それに比べ、これほど自由で平和な日本に住んでいて、何がそんなに不満なのだろう。
強権主義国家で、治安や経済が不安定になるのは、支配者の責任だが、民主主義国家においては、国民人一人の責任である。問題解決を他人に押し付け、自責・自浄できないのであれば、民主主義はむしろ国家の弊害となる。
⑵ 北朝鮮
日本と北朝鮮は、紛争を起こしたことはない。何度も語っている。日本人を拉致したのは、戦略上のスパイを養成するのと、西側の状況を詳しく知るためだった。
横田めぐみさんが拉致された1977年の頃の13歳と言えば、読み書き・そろばん、だけでなく、法律や経済学の知識も持っていた。そして、何より、一緒に戦っている韓国人より、アメリカのことをよく知っていた。
太平洋戦争中、日本軍は、どれほど占領地の人々をこき使った上で惨殺してきたことか?
しかし、それも、軍事機密を守るための「自衛」の一つであると言えば、論理的には成り立つ訳である。
隣国で戦争が起きて、軍需で大儲けしておいて、火の粉がちょっと飛んできたからといって、いつまでも引きずっている。
わが国は、この2国に対する執拗な敵視と蔑視によって、何を得たのだろう。そして今なお、何を失い続けているのだろう。冷静に考えてもらいたい。
3 日本はもはやアジアのてっぺんではない
そろそろ、私たちは、一つの固定観念を捨てなければならない。
「日本はもはやアジアのてっぺんではない。」
自由で平和だが、給料は上がらないのに、社会保険料は上がり放題。言論は統制されていないが、発言者はいつも言葉を選んでいて、むしろ窮屈そうだ。
以前の強盗は人を縛っても、金槌で殴りはしなかった。そんなことをするのは、貧しい暮らしと乏しい教育により、善悪の観念が健康的に獲得出来なかった、途上国の外国人と相場が決まっていた。しかし、今では、無計画な離婚と、令和の世に似合わないムラ根性、パワハラ。そうして、残念な経験を積んだ日本人が無抵抗な高齢者の手を金槌で殴る。
国際競技場で、ゴミを集めてその礼儀を褒められた。大谷翔平は、前人未到。真田広之の「SHOGUN」は、前代未聞。
そう、日本人のポテンシャルは非常に高い。
だから、理不尽な低賃金で、卑屈な人生を送っているのに、自由で平和で世の中が快適だから何も考えない。大したポテンシャルだ。
しかも、その快適神話には綻びが出始めている。異常者でもないのに、無慈悲な犯罪を犯す者の登場、水道管はヒビだらけ。
昨年(2024年)、GDPはドイツに抜かれた。超赤字国と統一を果たして、わずか35年目である。韓国は、2024年、ついに一人当たりのGDP(名目)で、日本に逆転した。
いつまでも、「青い目の人たちには勝てないが、黒い髪の人種では一番だ。」とは言っていられない。祖父母の時代のマインドをセットアップする頃合いだ。
4 奇貨置くべし
北朝鮮は相変わらず貧乏だが、それは、みんなが意地悪しているからだ。この意地悪包囲網の中これだけ耐えたのだから、今頃は相当筋力をつけているのではないだろうか。あくまで私の主観だが、今の北朝鮮は、安く買えて大化けする「奇貨」である。固定観念に囚われていると、大魚を獲り逃すかも。
日本で、あさま山荘事件が起こっている時(国中が共産主義=危険と考えていた時)、アメリカのキッシンジャー外交顧問は、突如中国を訪れ、国交を回復。一時は、日米に勝るとも劣らぬ友好関係に至った。当然、アメリカは大儲けした。
私の天下布法を目指す世界戦略の中には、ドイツ・イギリスとの協調も含まれている。そうすると、アメリカとの関係にも多少歪みが生じるし、ましてや、現況の3隣国との関係では、そんなスタンドプレイは、妬みや、やっかみを受けて、必ずその進展の妨げになる。
私のビジョンは、韓非子の思想を土台としている。欧米では無く、アジアが産んだ思想である。従って、中国はもちろん他の2国も、ビジョンを共有することは可能だろう。そこで、逆に、この4国が、国体の違いを超えて優劣を付けず協調し、この戦略を推進することができれば、アジア全体の評価にもつながるわけで、この3隣国は、いずれも「奇貨置くべし」に値すると私は考える。

感情が激しすぎて、自分の愚かな行為を悔やむばかり、耳を切ってしまったゴッホは、これを自画像として残す。37歳で拳銃自殺する人の心の闇は恐ろしい。
ところで、彼には、画商で、とても兄思いの弟テオという人物がいたことは有名である。
二人の手紙のやり取りは膨大で、その親密を伺わせる部分も多い。精神を病んだ人間にとって、こういう家族の存在は大きい。
しかし、なぜ、弟の画商は、それほどうまくいっていないわけではないのに、兄の絵は、存命中1枚も売れなかったのだろう。そして、なぜ、これだけ兄思いの弟を持ちながら彼は、37歳の若さで自殺するのだろう。
この謎を解くべく、二人の手紙を熱心に研究する学者も多い。しかし、しっくりした答えを聞いたことがない。
私は思う。それは単純に距離の問題であったのではないかと。
ゴッホの主治医ガシェは、彼に鎮静剤を投与する度に悩んでいたという。「こんなもので、この人間の激情・情熱を抑えても、きっと無駄なのだろう。彼の描く絵がそれを語っている。いっそ、多少周囲に迷惑がかかっても良いから、彼の好きなようにさせられたら。もっと数十年先に理解されるような絵を描くやもしれない。」
遠水近火。近くでゴッホという炎に焼かれても、所詮は他人の主治医、その絵の革新性を直観できても、家族のように支えることは出来なかった。
どんな話も肯定し、兄の才能を一番信じていた弟は、1000キロも離れた都市に住み、まるで違う環境で、兄の絵を見ていた。だから、その将来性を見抜くことは出来なかったし、彼が、自分の絵が理解されないことに死ぬほど苦しんでいることも気づけなかった。