説難

2020-01-01から1年間の記事一覧

韓非の空

事は密を以て成り、語は泄るる(もるる)を以て敗る 《韓非子55篇 説難篇》 前半を聞いたことがない人は珍しいだろう。そして、この言葉もまた韓非子の出展であることを知っている人は珍しいだろう。 大変思い入れのある言葉で、当然序盤で紹介したいと思…

片雲の風

月日は百代の過客にして、行きかふ年もまた旅人なり、(中略)予も、いづれの年よりか、片雲の風に誘はれて、漂泊の思ひやまず。 勤務先の同じ部署の仲間と「格安!奥の細道ツアー」に参加した時、学生時代、無理くり、松尾芭蕉翁著の「奥の細道」を暗記させ…

主権の鼎

パブロ・ピカソ「ラス・メニーナス」 本ブログの最初に取り上げた中世スペインの宮廷画家ディエゴ・ベラスケスの作品を、かの有名なパブロ・ピカソがオマージュしたものである。 私は、東京都美術館で初めてこの作品に出合った時、震えが止まらなくなり、そ…

平和の理

本カテゴリーの最終回にあたり、かねてより予告をしていた論文を掲載する。 「平和を科学的に考察する平和学の構築に向け柱礎として一例を呈す。」 本論の目的とするところは、平和の希求について、立場や環境によって左右される道義的もしくは感情的な観点…

普通

最近娘が、「結婚」や「養う」という表現に過敏に反応する。 男が働き、女が家庭に入るという旧態依然とした常識がお気に召さないようだ。 就活をしていた頃は、適齢期に結婚して子供を産み育てる将来像を描いていた娘も、入社して営業職に就き、同期はおろ…

ブレイクスルー

本ブログのテーマの1つは平和学の創設であるが、当初の目論見では経済学のように一般社会の全体の効用(幸福)が科学的思考によって最大化される手法を編み出す学問を嘱望していた。 本筋の見解としては、平和の効用を科学的に証明し、その維持に必要な措置を…

アルカディアにも税は有り

1 税制は経済政策の3本目の柱である 経済政策は、ご存じのとおり、金融政策と財政政策の二つに分かれる。 税制は、この内財政政策の一つと位置付けられているが、私は以前からこれは間違いだと確信している。 税制は、金融政策や公共投資・補助金の分配を…

五蠢

秦の始皇帝は、韓非子55篇の内、孤憤・五蠹(ごと)の篇を読んで、いたく感激し、この人に会って直接話すことができたら死んでも良い、と漏らしたという。 両篇、特に五蠢篇については、韓非子の法治理論・合理主義と並んで、「どのような素晴らしい献策も君…

役人の矜持

国家3権の一つである行政府について語るのであれば、憲法上の内閣の権能よりも、国民に直接国家権力を行使する実働部隊であるという点であろう。 官僚と国会との権力闘争については、しばしば報道に取り上げられるところであるが、要は国民の求めるところは…

ブレイクダウンⅲ勝者の配当

前回は、戦争における出費面について科学的に検証した。今回は、戦争における収益について検証してみたいと思う。 正直なところ、第二次大戦以降の紛争・戦争において、勝者が明らかな利権・収益を得たと言えるかと言うと甚だ疑問で、考察に値しないと考える…

Borderline

中学高校とひょんなことで馬が合った不良グループと付き合っていた。 人とは違う経験をさせてくれるとても大切な友人たちだった。 兄の影響でサーフィンを始めた。運動がまるでできなかった私だが、なぜかこいつだけは必死で打ちこめた。当時不良少年とサー…

碩学の砦

「民意が全てを決めるなら、こんなに格式ばった建物も権威づいた手続きも必要ない。」 堺雅人主演「リーガル・ハイシーズン2」。死刑判決を受けた世紀の悪女を弁護するため、どうにか控訴審まで持ち込んだ最高裁で彼は叫ぶ。 ちなみに、彼の言う格式ばった…

夫れ火は形厳なり、故に人灼(や)かれること鮮(すくな)し。水は形懦(だ)なり、故に人溺るること多し。

新型コロナによる混乱を利用して詐欺を働いたり、空き巣を働いたり者が居るらしい。 悲しい事だ。 阪神淡路大震災の時は、火事場泥棒が現れない日本の事を世界は称賛したものなのに。 江戸時代の火事場泥棒は、即刻市中引き回しの上、磔(はりつけ)になった…

ブレイクダウンⅱ平和が不都合な人たち

そもそも、本ブログは、韓非子の合理主義の正体である「利益誘導」の有効性を語るものである。平和が利とあらば、人は平和を選択し、戦争が利とあらば、人は戦争を選ぶわけである。 1 戦争の決算書 以前より戦争を経済学的に、いや、もっと論理的に、会計学…

新型コロナウィルス

新型コロナウィルスについては、2月の27日わが組織において、運用上の大きな動きが有った時から原稿を書き始めた。 しかしながら、当初明らかに大げさだと言う考えを持っていたところから、状況は日々変化し、現状では当時の目算とはまるで違う状況が展開さ…

フェミニズムの帰結_後編《本能》

前回、本稿の前編で、女性には、「経済的に許す限り、外で働くより、自分の子供は自分で育てたい。」という本性が有ると説いた点について、妻に話したところ、「そういう人が多いことは事実だと認めるが、「本性」という表現は気に入らない。「本音」と言う…

合理主義

本ブログの柱の一つは、諸子百家の中でいまいちメジャーになりきれなかった韓非子について、その魅力を紹介するというものだ。そこで、彼の主張を紹介すると同時に、皆が聞いたことのある故事成語や説話が、実は韓非子の出典であることをアピールしてきた。…

象箸玉杯

先日、ブログを読んでくれた読者から、「結論が唐突過ぎる時が有る。」との指摘を受けた。 確かに読み返してみると、全体的に何の話をしたいのかわからないまま話が進み、突然主張したいテーマが現れるケースが見受けられた。 現在、最終装丁に向けて、第一…

教育は国家百年の大計 最終回《平和》

1 平和主義 国家百年の大計を担う教育とは何かを考えたとき、それは良き有権者を育てることであると私は定義してきた。そして良き有権者を育てる最も適正なテキストは主権者の定義を定めた日本国憲法にあると位置づけこのシリーズを展開してきた。 日本国憲…

ブレイクダウンⅰ守られない約束

「一木一草焦土と化せん。糧食6月一杯を支うるのみなりという。沖縄県民斯く戦えり。県民に対し、後世特別の御高配を賜らんことを。」 沖縄根拠地隊司令官 太田実 太平洋では広島長崎はもちろんのこと、大阪東京など数万人クラスで民間人が殺害された都市が…

フェミニズムの帰結_前編《本性》

役割分担のテーゼ 現職大臣が育児休暇を取ることになって、少し話題になってきているが、実は日本の育児休暇制度の水準は世界的には最高水準である。 しかし、その取得率は6%以下で、いまだに、女性社長の比率も女性国会議員の比率も先進国中最低レベルで…

良薬は口に苦し忠言は耳に逆らう

韓非子55篇 外儲編 大変有名な言葉なのだが、その割には由来がはっきりしていない。それでも実は古典に活字として登場するのは韓非子55篇が最初である。 この言葉については、よく勘違いされているところで、「確かに正露丸は、本当に適法な成分で構成されて…

平和を画するのであれば、利を用いるのが上策であり、情を用いるとあらばその涙を数えず笑顔を摘むべきである

「ラ・ジャポネーゼ」。知る人ぞ知る、印象派の巨匠クロード・モネの傑作である。 モデルは、彼の妻カミーユ・モネ。彼女は本来黒髪なのであるが、金髪のカツラをかぶっている。西洋人の日本文化への憧れを強調しようとしたのでないかと思われる。 この絵画…